成人娱乐

当前位置:www.66159com > 成人娱乐 > 美高梅网上赌场:私を離さないで-恋、友情に

美高梅网上赌场:私を離さないで-恋、友情に

来源:http://www.jatoce.com 作者:www.66159com 时间:2019-07-19 12:19

  陽光はある特別の学校だ。ここに生活している生徒は普通の人間じゃない、提供者だ。提供者というのはクローンされた人で、生まれながらにして提供という职务を負っている。それは、自らの体の一部を提供する。普通の児童時代を過ごしても、外人のように自分の運命を支配する権利がない。例えば、子供生むとか、結婚とか、仕事までもできない。

01
青春とは嘘であり、悪である。
青春を謳歌せし者たちは常に自己と周囲を欺き
自らを取り巻く環境のすべてを肯定的に捉える。

初めてその姿を見たとき、壮絶なまでの美しさに衝撃を受けた。

美高梅网上赌场 1

彼らは青春の二文字の前ならば
どんな一般的な解釈も社会通念も捻じ曲げて見せる。

俺が乗り越えられなかった壁を軽々と越えてゆこうとする力強い黄金の翼を、どれ程の想いを込めて見つめただろう。

  何も知らないこの几人は落魄不羁に児童時代を過ごして、サッカー選手になる夢を持つトモ、照应人になりたい恭子、芸術家になりたい美和。恭子はずっと絵が动手で虐められたトモのそばにいった。トモもはじめから恭子の名前が書いてあったCDは恭子にあげた。その四人、ずっとそうすればいいのに......

彼らにかかれば嘘も秘密も、罪科も失敗さえも
青春のスパイスでしかないのだ。

500年の栄華を誇ったゴールデンバウム家を、劫火の中に焼き尽くさんとする激烈な蒼氷色の瞳、卓絶した才華と機略。

美高梅网上赌场 2

仮に失敗することが青春の証であるのなら
友達作りに失敗した人間もまた
青春のど真ん中でなければおかしいではないか。

生命が輝く、とはこういう事なのだと知った。

  美和という子は勝ち気で意地悪で、恭子は色んな嫌がらせを受けしまって、ずっと美和から支配させた。自分一位でなりたくない美和はトモに嘘をついて、トモの情侣になった。そうしたら、美和は恭子の平生の全部を奪われた。だけど、恭子は美和の介護人になって、そも嫌がらせのすべては愛情が欲しかったからだと知ってた。それが友情かもしれないね。
  恋人なら猶予を勝ち取れる機会がある噂を聞いたトモと恭子は陽光の創始者を訪れてきて、先生は猶予なんかあるわけではないと返した。クローンの存在で、病魔の苦しみから解放された。そんな役に立つものを誰でも手放しない。誰も治らない世界なんかに戻りたくないだ。だたら、クローンが魂があることを認められない。人間はクローンには心がないものと思い込もうとする。違うと声高に言っても無理で、潰されるだけだ。

しかし、彼らはそれを認めないだろう
すべては彼らのご都合主義でしかない。

そして、その輝きを手に入れることが出来たなら、その時こそ俺はこの暗闇から抜け出せると思った。

美高梅网上赌场 3

結論を言おう
青春を楽しむ愚か者ども

本気でそう思った────

 
  クローンはせめて許された中で、最大限豊かな人生を過ごすしかない。だから、クローンとか、提供者とかすべて論理を違反する行為だ。

            砕け散れ

キルヒアイスの死から四ヶ月が過ぎたある日の夜、元帥府の執務室でひとり泥酔しぐったりとしていたローエングラム侯を、ベッドに連れ込み初めて抱いた。

02
動物は基本群れるものである。

俺は期待していた。

肉食獣にはヒエラルキーがあり、ボスにならなければ死ぬまでストレスを抱え続ける。草食動物も天敵の襲撃で、仲間を犠牲にし続けることにジレンマを感じているはずだ。

酔いから覚めて、その冷徹な蒼氷色の瞳が俺を睨み据えるのを。

このように群れとは、個にとってなんら益をもたらさないのだ。ならば私は決して群れることのないクマの道を選ぶ。

────私を倒すだけの自信と覚悟があるのなら、いつでも挑んできてかまわないぞ────

クマとは1頭で生きていくことに、何の不安も感じていない孤高の動物だ。しかも冬眠ができる。なんと素晴らしいことか。

あの時と同じ戦慄の波動が、再び俺の全神経を駆け巡るのを。

次に生まれ変わるのなら
私は絶対
クマになりたい。

だが公は、己を組み敷く男がキルヒアイスでないことに混乱し、泣きじゃくるだけだった。

05
俺は優しい女の子は嫌いだ。
ほんの一言挨拶を交わせば気になるし、メールが行き交えば心がざわつく。
電話なんてかかってきた日には着信履歴を見てつい頬が緩む。
だが、知っている。
それが優しさだということを。
俺に優しい人間はほかの人にも優しくて、そのことをつい忘れてしまいそうになる。
真実は残酷だというなら、きっと嘘は優しいのだろう。
だから、優しさは嘘だ。
いつだって期待して、いつも勘違いして、いつからか希望を持つのはやめた。
訓練されたぼっちは二度も同じ手に引っかかったりしない。
百戦錬磨の強者なのだ。負けることに関しては笔者が最強。
だから、いつまでも、優しい女の子は嫌いだ。

その涙を見た瞬間に、全てが冷めた・・・。

09
俺は自分が好きだ。
今まで自分の事を嫌いだと思った事なんて無い。
高い基本スペックも中途半端な良い顔もペシミスティックな現実的な思量も全く持って嫌いじゃない。
だが、初めて自分を嫌いになりそうだ。
俺が見て来た雪ノ下雪乃は常に美しく嘘を付かず誠実で寄る辺が無くてもその足で立ち続ける。
そんな雪ノ下雪乃にきっと俺は憧れていたのだ。
勝手に期待して、勝手に理想を押し付けて、勝手に理解した気になって、
そして勝手に失望する。
何度も何度も戒めたのにそれでも結局なおっていない。
雪ノ下雪乃ですら嘘を付く。
そんな当たり前の事を許容出来ない自分が我は、
嫌いだ。

俺は後悔した。

10
みんなでやることが素晴らしくて、
みんなでやることがいいことで、
じゃあ、一人でやることは悪いことなのか?
どうして、今まで一人でも頑張ってきていた人間が
否定されなきゃいけないんだ。
そのことが俺は許せない。

どうしようもないほどの、ただの子供だった────

11
いや、人という字は人と人とが支えあって、とか言ってますけど、片方寄りかかってんじゃないっすか。誰か犠牲になることを容認しているのが『人』って概念だと思うんですよね。だから、この文化祭に、文実に、ふさわしいんじゃないかと。

■ 激 情 ■

俺とか超犠牲でしょ。アホみたいに仕事させられてるし、ていうか人の仕事押し付けられてるし。それともこれが委員長の言うところの『ともに助け合う』ってことなんですかね。助け合ったことがないんで、俺はよく知らないですけど。

【1】

12
比企谷。
誰かを助けることは、君自身が傷ついていい理由にはならないよ

この夜のロイエンタールは不機嫌を隠そうともしていなかった。

いや、別に傷つくってほどのもんでも……

自宅のソファーで行儀悪く片膝を立て、その上に右肘を乗せたままのポーズで煙草をくゆらせていた。眉間に皺を寄せたまま、じっと一点を見つめている。

……たとえ、君が痛みに慣れているのだとしてもだ。
君が傷つくのを見て、痛ましく思う人間もいることにそろそろ気づくべきだ、君は

脳裏には、泣きじゃくるラインハルトの姿がいつまでも焼きついて離れない。

正しいやり方が偉いだなんて,それこそが怠慢だと俺は思うのだ。
教科書に従って、カリキュラムをこなして、ノルマを達成して…。
それは今までの伝統と正攻法にのっとっているだけじゃないのか。
過去の財産に依存して、権威に寄りかかって、未だ何者でもない自分自个儿を塗り固めるものではないのか。
自分の正しさを何かに委ねることのどこに正しさがある。

不愉快だった。

俺たちは、少なくとも俺には、人を信じて任せるということができない。
それでうまくいかなくても自分一位を責めればいい、誰かを責めたくなどない。
誰かを恨みに思うのは恨みに恨みきれない。
それは優しさでも責任感でもない。
自分のことなら諦めもつくが、人にされたことでは諦めがつかないからだ。
あのときあいつがこうしていれば、そのときそいつがちゃんとやっていれば、そう思って生きていくのはとても重苦しくて辛くてやるせない。
なら、一人でやってしまうほうがいい。
自分一个人の後悔なら、嘆くだけで済むから。

面倒臭いガキに手を出してしまった────そんな気になっていた。

一时半霎たかだか数か月で人間が劇的に変わってたまるか。
トランスフォーマーじゃねぇんだよ。
なりたい自分になれるなら、
そもそもこんな俺になってない。
変われ、変わる、変わらなきゃ、変わった。
嘘ばかりだ。
今の自分が間違っていると、
どうしてそんなにも簡単に受け入れられるんだ。
なんで過去の自分を否定するんだ。
どうして今の自分を認めてやれないんだ。
なんで未来の自分なら信じることができるんだ。
昔、最低だった自分を、今どん底の自分を認められないで、
いったいいつ誰を認めることができるんだ。
今の自分を、今までの自分を否定してきて、
これからの自分を肯定することなんてできるのか。
否定して、上書きするくらいで変われるなんて思うなよ。
肩書きに終始して、認めてもらえていると自惚れて、
自らの境遇に酔って、自分は重要な人物だと叫んで、
自分の作った規則に縛られて、
誰かに教えてもらわないと自分の世界を見出だせないでいる、
そんな状態を成長だなんて呼ぶんじゃねぇ。
どうして、変わらなくていいと、そのままの自分でいていいと、
そう言ってやれないんだ。

犯した後、気を失ったままのラインハルトの身体を清め服を着せ、乱れたシーツも整えてから執務室を後にした。かなり泥酔していたから、目覚めたときには何も覚えていない可能性もある。

青春に壁はつきものである。

そう願いたかった。

最低限の努力もしない人間は才能のある人をうらやむ資格はないは。成功できない人間は成功者が積み上げた努力を想像できないから成功できないのよ。

だが、もしも覚えていたら・・・。

女なら捨てればよい。それで終わりだ。

しかし、ラインハルトは紛れもないロイエンタールの上司だった。一度だけの関係だとあっさり捨てて不興を買うことになれば、十数年に及ぶ軍人としての労苦も全て水泡に帰すことになる。ゴールデンバウム家があと少しでドブの中に転げ落ちようとしているのに、それを見ずして失脚するなど笑止の極みだろう。

────ならば、とうに冷めた気持ちを奮い立たせて「愛している」と囁くか?

冷める前なら言えたはずだった。いや、言うつもりだったのかもしれない。

だけど今、ロイエンタールの心は自分でも呆れるほどに冷えている。

冷めたまま「愛している」と囁き続けるなど、それでは女たちを相手にしているときと何も変わらないではないか。

考えただけで、うんざりした。

────俺が欲しかったのは、神だ。泣きじゃくっている子供じゃない。

それにしても、もっと早く気付くべきだったのだと思う。

ラインハルトの脆弱さに。

キルヒアイスが死んだとき、独裁者として取り繕っていた仮面の一部が割れて、その繊弱な本性が垣間見えた。そのときに気付くべきだった。

・・・いや、多分気付いていたのだ。皆が気付いていた。ただ、痛ましすぎて誰も直視できなかったのかもしれない。だから、皆で見ないふりをするしかなかった。

どうしてあの時の脆弱さは許せたのに、今夜のラインハルトの弱さは我慢ならなかったのだろうか。いくら考えても解らなかった。

ロイエンタールはまだ2cm 程しか吸っていない煙草を灰皿に押し付けて、また次の煙草に火をつけた。空になったケースを握りつぶしてゴミ箱へと放り投げたが、軌道が逸れて右側に落ちた。チッと舌打ちをして、ソファーに寝転がり天井を見上げる。こんな粗雑な行動でさえ、どこか貴公子然として優雅だった。

ロイエンタールは何かに熱くなるということのない男だった。人生に冷めていた。

そんな男がラインハルトと出会って変わった。

全身の血が滾るような昂揚感に胸を打ち震わせ、生きているのだと切ないほどに実感した。自らの限界という壁によって見ることが叶わなかったその先にも、まだ宇宙(そら)は続いていることを知った。誰の風下につくことも潔しとしなかったはずなのに、ごく自然に膝を折り、そんな自分を当たり前のように受け入れた。

それなのに今、急激に冷えているこの心はどうしたものかとロイエンタールは考えあぐねていた。

────どうすればよい?

これからも抱き続け愛していると囁き続けて、自分のものにしてしまおうか?

キルヒアイスを失って心が壊れかけている今なら、付け込む隙もあるだろう。惰弱さばかりが目に付くようなら、打倒してとってかわってやればよい。

そうでなければ…、もし、またあの頃のように強く熱く光り輝いてくれるなら、そのときはこの生涯の全てをかけて、全身全霊をかけて愛するだろう。

どちらにせよ明日のローエングラム公の出かた次第だな、とロイエンタールは思った。

────今、どうしているだろうか。目を覚まして泣き崩れているだろうか。怒りに打ち震えているだろうか。それとも、何も知らず眠り続けているだろうか。

明日、あの人はどんな顔をして俺の前にあらわれるのだろうか・・・。

全て自分に責任があるにもかかわらず、ロイエンタールはまるで他人事のように空想にふけった。先程までの不愉快な気分も多少晴れて、ラインハルトとの心理戦を楽しみたい気持ちが強くなっていた。明日が待ち遠しく眠れそうにもなかった。

「これ以上落胆させないでくださいよ」

吐き出した煙草の煙を見やりながら、ロイエンタールは小さく呟いた。

■激情■

【2】

・・・頭が痛い・・・吐き気がする・・・

くそ・・・、あんなに飲むんじゃなかった・・・頭、イタイ・・・

重い瞼を無理やり抉じ開けると、そこは執務室の隣に用意された寝室。泥酔したあげくに寝てしまっていたことを、ラインハルトは薄い靄がかかったような頭で何となく認識した。

ここ数日、嫌なことばかりが続いていた。

明日も科学技術総監のシャフトがイゼルローン要塞の战略を具申してきた。いつまでもイゼルローン要塞に拘り続ける馬鹿がここにもいたか、と冷めた気持ちで話を聞いた。まだ誰にも話してはいなかったが、ラインハルトはイゼルローン要塞など须求としない社会構造を自らの手で創りあげるつもりだったのだ。それなのに、そんなラインハルトの思惑に気付きもせずに、シャフトは熱弁をふるい続けた。

指向性ゼッフル粒子以外にはたいした実績もないくせに、くだらぬ政治力ばかりを駆使して今の地位にまでのし上がり、肥大した自尊心をチラつかせて賢しらに軍事軍略を説くこの男をどうやって消してやろうか、気が付けばそんなことばかりを考えていた。

日々荒み続ける今の自个儿を知ればキルヒアイスはどう思うだろう・・・。そう思うとやりきれなさで酒に溺れるしかなかった。こんなところで挫けてはいけないのだと何度自分に言い聞かせても、不意に心の均衡が崩れそうになって泣きたくなる。でも絶対に誰の前でも涙など見せてはいけない自分の立場は承知している。だからまた酒に逃げてしまった。

────もっと、しっかりしないと・・・

官舎に戻ってもう一度ゆっくりと休んだほうがいい、そう思った。たいして飲めもしないくせにこんなことを繰り返していては、翌日の仕事に支障をきたすようになってしまうかもしれない。皆の前で無様な姿を晒すなど、絶対にあってはならないことだ。

ラインハルトは頭痛に顔を顰めながら重い身体をゆっくりと起こした。

「・・・・・・?」

身体に感じる奇妙な違和感に動きが止まる。

この違和感は知っている。変な感じ・・・いや、懐かしい感じ。身体の奥底が熱いこの感じ。知っている。知っている・・・。

「ぁ・・・っ!」

違和感の原因に思い当たったラインハルトの蒼氷色の瞳が驚愕に見開かれ、緩く開かれた唇からは急速に色が失われていった。

ここに誰かが来た。抱きしめられて、キルヒアイスだと思ったのに違っていて・・・。

それから、それから・・・?

何も覚えていない。相手が何を言ったのか、自分が何を言ったのか全く思い出せなかった。

まだ頭には白い靄がかかったままで、思い出せない不安に視線が泳ぐ。何か取り返しのつかない失態を演じてしまったのではなかろうか、そう思ったとき不意に白い靄の隙間から自分を組み敷いた男の瞳が垣間見えたような気がした。

青と・・・黒の・・・。

「ロイ・・・エン・・・タール・・・」

そんなはずはない何かの間違いだ、必死でそう思おうとしても、あの瞳を持つものは一人しかいない。一目見た瞬間に心に焼きつくあの瞳。間違えるはずがなかった。

ラインハルトは、衝撃のあまり意識が遠のきそうになるのをシーツを握り締めることで何とか堪えたが、虚空を見つめる蒼氷色の瞳にはもはや何も映ってはいなかった。

────ロイエンタール。よりによってロイエンタール・・・。

他の男ならよかった、そう思う。他の男ならどうにでも丸め込む自信があった。元帥府に所属するどの男でも丸め込む自信はある。もっと下の階級の奴ならば最悪殺してしまってもいい。代わりはいくらでもいるのだから。

だけど、よりによってロイエンタール。殺すわけにはいかないのだ。宇宙を支配する為には絶対に必要な人材だ。殺せない。

こんなことならオーベルシュタインの方がマシではないか。あの男には私心がない。面白みのない男だが、私心がないからこそ、こちらが主君としての責務を果たしている限りは裏切る心配もないし扱いやすい場合もある。

それに比べてロイエンタールはどうだ。私心と欲の塊ではないか。

扱いにくい男。扱うのに最も気を遣わねばならない男。

そんな男に、前後不覚に酔いつぶれたまま抱かれてしまったのだろうか。キルヒアイスと間違えたことだけ、うっすらと覚えている。それがラインハルトの不安を増大させた。

キルヒアイスの前での自分、それ以外の人間の前での自分、徹底的に使い分けてきたはずだったのに・・・。

取り繕うことを忘れた自分が、ロイエンタールの前でどんな表情を見せてしまっていたのかと想像するだけでゾッとした。キルヒアイスの前でだけ見せていた本当の自分が、決して主君として相応しいものではないことをラインハルトは知っていた。

ロイエンタールに見限られてしまうような醜態を晒したりはしなかったろうか・・・そんな冷たい恐怖が心の中を流れ落ちた。

そして、部下に対して恐れを感じている自分に気が付いたとき、ラインハルトの矜持は音をたててひび割れ、今度は噴き出すような怒りに全身が震えた。

──── 一体どういうつもりなのだ。漁色家だとは知っていたが、まさかこの俺をそこいらの女共と同列に扱う気か。それに、もしも今夜の行為を申し訳ないと思う気持ちがあるのなら、もしくは何か言いたいことでもあるのなら、俺が目を覚ますまではここに留まっておくべきではなかったのか。

しかし、室内のどこを見渡しても、ロイエンタールがここに存在した痕跡など一切見つからなかった。何事もなかったかのように全てを消して去ったのだ。あるのはラインハルトの体内に小さく灯ったままの熱と、白い靄の隙間から垣間見えた金銀妖瞳の曖昧な残像だけだった。

馬鹿にされているような気がした。

────何様のつもりだ。お前なんぞ、所詮は俺に飼われて生きる犬ではないか。それを立場も弁えず俺を穢そうというのか。愚弄するのか。この俺を。この俺を・・・!

ぎりと噛んだ唇から血が滲んだ。

口の中に血の味が広がり、その生々しさがラインハルトの沸騰した脳をほんの少しだけ冷ます役割を果たした。明日からのことを考えなくてはいけない、そう思った。

────まさか誰かに話したりすることはあるまいが、牽制しておいたほうがいいかもしれない。だが絶対に下手に出てはいけない。どちらが主人でどちらが犬か、思い知らせなくては・・・。

だけど・・・明日からどうすればいいのだろう・・・。

明日の会議では、嫌でも顔を合わせることになる。どんな顔をして会えばいいのだろう。何を言えばいいのだろう。

ロイエンタールが何を言ったのか、自分が何を言ったのか何をしたのか、ラインハルトはどうしても思い出せな かった。思い出せないのだから、明日どう対応すべきなのか全く解らなかった。

酔っていて何も覚えていないかのように振舞ったほうがよいのか、それとも糾弾して謝罪させ、その後水に流せばよいのか、それすら判断がつかなかった。

相手がロイエンタールなだけに、対応を誤れば今まで築き上げてきたものを全て失うかもしれない。

ロイエンタールはラインハルトにとって、キルヒアイス以外で初めて野心を共有した仲間だった。できれば消したくはなかった。

胸を黒く塞いだままの不安を振り払いたくて、ラインハルトは重い身体を引きずるようにして洗面所へと駆け込んだ。冷たい水で乱暴に顔を洗ってはみたけれど、それでも胸を塞ぐ不安も、頭の中で蕩う靄も消えることはなかった。もう、明日が来なければいいのに、そう思った。

「しっかりしろ、ラインハルト・・・」

小さく呟いて目の前にある鏡を睨みつけてはみたけれど、そこに映る自分自己の瞳は充血し真っ赤で、溢れそうな涙がどうしようもないほどに惨めだった。

そして、混乱と怒りで忘れていたものが今、鏡に映っている。

銀のペンダント。

キルヒアイスが見ている・・・。

「・・・・・・」

自分でも説明のできない悔しさと情けなさに堪えきれず、ラインハルトは声を押し殺して暫く泣いた。

→ next

■激情■

【3】

会議の最中、ロイエンタールはずっとラインハルトを観察していた。

露骨なほどに、じっと視線を向け続けたが、それでも一度も目が合うことはなかった。避けられているのは明らかで、口元には皮肉っぽい苦笑が浮かぶ。

もしラインハルトが何も覚えていないようなら、昨夜のことは無かったことにしてやろうかとロイエンタールは考えていた。 だけど、ラインハルトが、昨夜の相手がロイエンタールであるという事実だけはしっかりと把握していることは間違いないようで、このまま知らんふりをするわけにはいかない。

────さて、どうするかな・・・

ロイエンタールはしかつめらしい顔で配布された書類に視線を落としながら、頭の中では今後のラインハルトとの関係をどうするか、そのことだけを思案した。今回の議題はイゼルローン要塞战术の件が中央であり、この件に関してはケンプ、ミュラー両名が午前中に元帥府に出頭し、既にラインハルトから出征命令を受けている。差し当たりロイエンタールには何の関係もないようだった。

会議が終了し、皆が一斉に席を立つ騒々しさのどさくさに紛れ、ロイエンタールはラインハルトの耳元に唇を寄せて「少しお話が」と囁いた。瞬間、ラインハルトは蒼氷色の瞳に僅かな緊張を閃かせたものの、動揺を見せることはなく、「わかった」と呟いて再び椅子に腰を下ろした。

皆が退室し四人きりになると、ラインハルトは長い脚を組んでデスクに片肘をつき、無遠慮にロイエンタールの金銀妖瞳に鋭い視線を浴びせながら「何か用か?」と言った。その態度は傲慢そのもので、昨夜の泣きじゃくっていた子供の顔は完全に姿を消していた。これほど傲慢が似合う人間は他におるまい──── 一弹指見惚れたあと、ロイエンタールは軽く頭を下げた。

「昨夜は申し訳ありませんでした」

「何がだ?」

「・・・お分かりでしょうに」

「卿がああいうことでは特にだらしない男だということは知っている。気にするな」

「恐縮です」

もしもラインハルトが激怒しているようならば、こんなことで失脚したくはないロイエンタールとしては誠意を見せて平謝りするしかなかったが、幸い今回は大目に見てくれるようだった。後から過去を穿り返すような陰湿さとは無縁の人であるし、もう大丈夫だろう。ロイエンタールは心の中で安堵の息を漏らした。この程度のことで消されるほど、自分の存在が軽く見られているわけではないという絶対の自信はあったが、それでも多少の不安はあったのだ。

ラインハルトとキルヒアイスの絆に触れてしまったから・・・。

ラインハルトは泣いていた。キルヒアイスの名を呼びながら。酔っていたからこそ、取り繕うことを忘れたあの姿は真実で、それはロイエンタールにとっては不快と苛立ちを臓腑に刻み込まれるようであり、ラインハルトにとっては誰にも知られたくない恥部そのものだった。

お互いに触れたくない部分は共通していて、会話を進めまいとする二人の沈黙が、室内の空気を停滞させている。

先に空気を揺らしたのはロイエンタールだった。

「閣下」

「何だ?」

「仰るとおり、私はだらしない男ですので・・・」

金銀妖瞳を細めて唇の端を軽く歪めながら、低音で囁きかけた。

「お寂しいときは、いつでもお相手致しますよ」

「・・・それはこちらの台詞」

一瞬、目を見開いたロイエンタールを真正面から見据えながら、ラインハルトは口元に薄い笑みさえ浮かべていた。

「・・・女にそう言われたことはなかったか?」

傲慢さを片時も崩すことないラインハルトは完璧なまでに美しい。

ロイエンタールが手を伸ばしてラインハルトの腕を掴み、強く引き寄せて唇を奪っても、ラインハルトは特に拒絶することもなく静かだった。だけど、二人の唇の隙間で揺れる空気は、ラインハルトの緊張と僅かな怯えを敏感に波紋して、ロイエンタールを失望させた。

「冗談ですよ」

ラインハルトを解放し敬礼すると、ロイエンタールは踵を返して退出した。背後で自動ドアが閉まる寸前、肩ごしに振り返ると、胸のペンダントを握り締めて俯くラインハルトの姿が視界に映った。黄金に縁取られた睫毛の端に光るものが見えたような気がして、ますますロイエンタールを失望させた。

*

高級上士用クラブ『海鷲』のカウンターで、ロイエンタールは一人ブランデーを煽る。

────それはこちらの台詞

────女にそう言われたことはなかったか?

昨夜の失態を取り戻そうと虚勢を張っていただけに過ぎないのだろうが、それにしても何か心を見透かされたような気がして癇に障る。

「クソガキ・・・」

思わず独りごちた。

直後、背中をバシと叩かれてブランデーが危うく零れそうになり、犯人が誰なのかは重々承知の上でジロリと背後を睨みつけた。「よぉ」と軽く片手を上げて挨拶をしたミッターマイヤーが隣の席に腰を下ろして、ロイエンタールを覗き込む。

「誰がクソガキだって?」

「心配するな。卿のことじゃない」

「当たり前だ、それは解っている。どうした?道で子供に脛でも蹴られたか?」

「まあ、そんなところだ」

ロイエンタールが適当にあしらおうとしても、ミッターマイヤーは面白がって喰いついてくる。

「まさか、仕返ししようなんて大人気ないことを考えてはおるまいな? やめておけ、みっともない!」

「残念ながら俺は大人気ない男なのでな、やり返そうかどうしようか迷ってるところさ」

至極真精神に言ったつもりだったが、当然ミッターマイヤーは冗談と捉えたようで「まあやるなら全力でやれ。呆れたご婦人方に逃げられぬ程度にな」などと言って笑っていた。

その後、ルッツやミュラーたちも合流し、一時間ほど雑談を交えたあと、ロイエンタールは一足先に店を出た。

酔いを覚まそうと、ロイエンタールは夜風に当たりながら界隈を歩いた。

人通りの絶えた先に、皆に忘れ去られたかのよ うな小さな広場があった。街灯の下の古びたベンチに腰を下ろし、ロイエンタールは夜空を見上げた。

キルヒアイスを失ったあと、ラインハルトが一度も『海鷲』を訪れてはいないことをふと思い出した。もしかしたら、ロイエンタールの知らないうちに訪れているのかもしれないが、多分それはないだろうと思った。とにかく目立つ人で、ラインハルトが訪れた翌日にはすぐに「ローエングラム侯がいらしてた」と話が広まっていたが、今そんな話は一切聞かない。

時折キルヒアイスと一緒にやって来て、でも酒には強くないのか、2杯目からはさっさと林檎ジュースなどを飲みながら、飲むより食べるほうに集中している姿を、おそらく皆が微笑ましい気持ちで見ていたはずだった。

────これからどうなるのだ、俺たちは・・・

空に答えがあるわけでもないのに、ロイエンタールは夜の闇から目が離せずにいた。金銀妖瞳を鈍く光らせながら闇を睨みすえた。

キルヒアイスを失って、ラインハルトは翔ぶことを止めた。

何をしている、早く翔べ、ロイエンタールがいくら願っても、ラインハルトは大地にうずくまったまま羽ばたこうとはしない。

その白い両手と翼を広げさえすれば、銀河系全てを包み込み支配することが出来るほどの人間が、たった一人の死にここまで囚われることがあるのだろうか。

もう一度俺を高揚させてみろ・・・、そんな願いをぶつけて抱いてみたのに、ラインハルトはただ泣くだけで、ロイエンタールが愛した圧倒的な輝きを見せてくれることはなかった。抱いた後、何一つ満たされることなく空っぽのままだった胸中に吹き抜けた冷気は、まだロイエンタールの魂を冷やしたままだ。

この失望を抱えたまま、生きる自信はなかった。忠義を尽くす気にもなれなかった。

────奪ってしまおうか

ラインハルトが本当の意味でキルヒアイスに別れを告げたとき、何が変わるのか知りたい。

ロイエンタールは純粋にそう思った。

奪うことでラインハルトが破滅するかもしれない。

もしかしたら、たった一个人自分だけが破滅するかもしれない。

でも、たとえそうだとしても、この閉塞感から抜け出せるのなら、かまうものか。

────まあいい、暫くはこの不毛なゲームを続けよう

闇から生まれた白く軽やかな粒子が、ふわふわと降り落ちてロイエンタールの肩を濡らした。ベンチから立ち上がり、白い息を吐きながらコートの襟を寄せる。

明日から何かが変わればいい────そう願いながらロイエンタールは家路についた。

美高梅网上赌场:私を離さないで-恋、友情に関して。酔いはとっくに覚めていた。

*

アンネローゼが去った後、ラインハルトはシュワルツェンの館を引き払い、高級仕官用の官舎に移り住んだ。

ここで一人、ラインハルトは眠る。

暖房がよく効いた暖かい寝室。柔らかいバスローブで素肌を覆い、シーツに横たわり丸くなる。ペンダントをぎゅっと握れば、キルヒアイスの幻が現れて背後から優しく抱きしめてくれる。この幻は後ろを振り返ると消えてしまうから、ラインハルトは決して振り返らない。

今日、ロイエンタールを上手く退けることは出来ただろうか。弱みを見せたりはしなかったろうか。見くびられるようなことはなかったろうか。

ラインハルトは考える。すると、後ろから回された逞しい腕に力が篭り、ラインハルトの傷ついた心を少しずつ癒す。

────キルヒアイス。俺を助けてくれるのはお前だけ、お前だけだ・・・

宇宙を手に入れる。この約束を果たすためラインハルトは生きている。この苦しみも、約束を果たせば終わるのだと自分に言い聞かせ、また明日も生きる。

────キルヒアイス、おやすみ・・・

ペンダントにそっと口付けて、ラインハルトは瞳を閉じた。

→ next

■激情■

【4】

この頃、オーディンではちょっとした噂が流れていた。

ラインハルトの改良によって、国王の居城「新無憂宮」は広大な庭園と建築物群の一半が閉鎖され、それに伴って多くの侍従や女官も解雇された。

辞退されることなく新無憂宮に残ることが許されたのは、大半が老人ばかりだったので、「天子の世話なんか老人だけで十二分だというローエングラム公の意思表示だろう」「国君に対するローエングラム公の嫌がらせだろう」といった風に、皇上に対するラインハルトの悪意と解された噂だけが流れた。

ラインハルトの執務室での所用を終えたロイエンタールは、退室する際にふと噂のことを思い出して話題にした。先日の一件以来、ラインハルトとの間に多少気まずいものがあったので、何か別の話題でも・・・そう思ったに過ぎない。

ラインハルトは僅かに眉を動かして「皆がそう言ってるのか?」と訊いた。

「ええ。違うのですか・・・?」

この件に関しては、数日前に『海鷲』で他の提督たちと話題にしたばかりだった。

浪費と浮华の象徴だった新無憂宮の縮小については皆が賛成しており、異を唱える者などいなかったが、「美丽的女子がいなくなったのは残念だ」「老人ばかりでは目の保養にならん」といった冗談交じりのクレームだけはあちこちから沸き起こった。「ローエングラム公がもう少し女に興味を持ってくだされば良かったのだが」というビッテンフェルトの嘆き節に皆が賛同した後、別の話題に移っていった。

もしかして違うのだろうか────そう思ったけれど、ラインハルトは「いや、違わない。もう下がっていいぞ」と言って書類に視線を落としてしまったので、ロイエンタールは敬礼して退出した。

その後、自分の執務室に戻り仕事を再開しても、先程のラインハルトとの会話が何故か胸の奥底に引っかかって集中できなかった。

────皆がそう言っているのか?

このときのラインハルトの瞳が、僅かに傷ついた色を浮かべていたような気がしたが、もう思い出せなかった。 大した意味もなく、軽い気持ちで投げかけた会話だったので、そのときラインハルトが見せた一瞬の表情をほとんど見逃してしまったことを、ロイエンタールは悔やんだ。

仕事を終え帰る時間になっても引っかかったものは消えてくれず、ロイエンタールはため息を一つ吐き出した後、パソコンに向かい、新無憂宮の縮小・人員削減に関する記録が纏められているファイルにアクセスした。 上級大将たるロイエンタールには、ほとんどの情報にアクセスする権限が与えられているが、担负外のことでもあり、この件に関する記録には全く目を通していなかったのだ。

一通り読んでみても特に気になる箇所はなかったので、次はラインハルトの勤務記録にアクセスした。ラインハルトは元帥と宰相の地位を兼任し、数多くの機密を抱える身であれば、全ての行動を公にするわけにもいかず、その勤務記録にはロイエンタールでさえアクセス无法な箇所は多々存在する。ただ、新無憂宮の件は機密にする程の事案でもないせいか、全て公にされており、情報は簡単に手に入った。

「・・・・・・」

3ヶ月前────昨年の三月に、ラインハルトはある資料を取り寄せていた。それは帝都オーディンの雇用情勢に関するもので、特に高齢者の雇用について調査した資料がズラリと並んでいた。高齢者の再就職の厳しさを示すものばかりだった。

そういうことだったのか・・・

ロイエンタールはラインハルトの真意にやっと気付いた。高齢の侍従や女官は、何十年もの歳月を宮廷で過ごし、今更外の世界では生きていけない者ばかりなのだ。でも、若い者なら体力も適応力も、そして労働力としての需要もあるから、この先、他の職業に就いても生活できる。だからラインハルトは高齢の者だけを解雇せずに残したのだろう。

ロイエンタールはパソコンの電源を切り、デスクに肘を付いて頭を抱えた。

10月といえば、キルヒアイスが死んでからまだ1ヶ月。当時のラインハルトは、一見すれば既に自己を回復しており、仕事も精力的にこなしていた。しかし、実際は、話し掛けられていることにも気付かない、書類のサインを忘れる、自分が命令したことを忘れる、そんな小さなミスを何度も繰り返していた。

10月というのは、ラインハルトにとって、そういう時期だったのだ。

だが、そんな時期でも、ラインハルトは自分なりの優しさを忘れてはいなかった。雇用の件はラインハルトの勤務記録にしか残されておらず、おそらくラインハルトは他の誰に任せるでもなく自分で資料を収集していたのだろう。

善意が悪意と解され噂として広まっていることを知ったとき、ラインハルトはどんな思いをしたろうか。それを考えると、ロイエンタールはその話題を本人に直接ぶつけてしまった己の迂闊さを呪うしかなかった。

『海鷲』での提督たちの会話には誰の悪気もなく、単に酒の席でのネタにしたにすぎない。新無憂宮の人員がいくら削減されようが、そんなものは大半の人間にとって何の関係もないことで、ロイエンタールにとっても興味のないことだった。おそらく大勢の人間が同じように考え、無責任に話題にした結果、間違った噂として広まってしまったのだ。

ラインハルトは少年の頃から数多くの悪意や嫌がらせに打ち勝ってきた。相当打たれ強い人間で、この程度の誤解で傷つくことはないだろう。ロイエンタールとしてはそう思いたいのだが、ここ数日の間にも、幾度かラインハルトの弱さを目の当たりにしている。

────皆がそう言っているのか?

────いや、違わない。もう下がっていいぞ

ロイエンタールはこのときのラインハルトの表情をきちんと見ていなかった。思い出すことは出来ない。だけど、傷ついた表情か、或いは自嘲まじりの諦めの表情か、この二つのうちのどちらかに違いない、そう思った。

少し調べれば解ることだったのに、誰もそうしなかった。側近中の側近たる自分達が、寄って集って傷つけてしまったような、そんな苦味がこみ上げてくる。ロイエンタールはラインハルトの弱さに失望し苛立っていた。だけど傷つけたいと思ったことなど一度もなかった。

可哀相なことをしたかもしれない。ロイエンタールはこのとき心からそう思った。

キルヒアイスなら気付いただろう。ラインハルトの真意に、すぐ。

こういうことに気が付くか付かないか。これがキルヒアイスとそれ以外の人間との決定的な差なのだと、ロイエンタールは認めざるを得なかった。

こういう小さな事が一つ一つ積み重なるうちに、ラインハルトは益々心を閉ざし、キルヒアイスの影ばかり追うようになるのかもしれない。それではいけないのだ。

ロイエンタールは鞄とコートを抱え執務室を出た。ラインハルトが既に帰宅していることを知ると、そのまま外に出て車に飛び乗り、一気にアクセルを踏んだ。

*

ロイエンタールはラインハルトの官舎の前に車を止め、外に出た。

カーテンを閉めたままなのか、室内の明かりはほとんど外には漏れていない。ちらと腕時計を見て、訪問するのに失礼な時間ではないことを確認してから、ロイエンタールは玄関のチャイムを鳴らし、寒さの中で暫く待った。

ラインハルトは出てこない。

ドアホンで誰が訪問してきたかは分かっているはずなのに、避けられたか。そう思いながらも念の為にもう一度鳴らすと、内側からドアが開いてラインハルトが顔を出した。

入浴中に慌てて出てきたのか、バスローブを纏っただけの格好で、黄金の髪はぐっしょりと濡れたまま毛先からポタポタと雫を落としている。あのペンダントも、今は身に付けていな い。

「・・・こんな時間にどうした?」

訪問されることなど全く予見していなかったようで、ラインハルトは不審げに表情を固くしている。

「夜分に申し訳ありません・・・ご入浴中でしたか?」

「ちょうど出ようと思っていたところだった。チャイムには気付いていたんだが裸で出るわけにもいかんだろう?待たせたな、まあ入れ」

玄関先で追い返す気はないようで、ラインハルトはロイエンタールを室内へと案内した。

初めてここを訪れたロイエンタールは、案内されたリビングの様子を見て思わず立ち止まり、軽く眉を顰めた。

「どうした?」

「・・・いえ、別に」

「そこに座って待っていてくれ。髪、拭いてくる」

ラインハルトがバスルームに消えていったあと、ロイエンタールはソファに腰掛けて周囲を見渡した。

何もない部屋だ・・・そう思った。

オーディオも無い、テレビすら無かった。

趣味を楽しもう人生を充実させよう、そんな意欲や気力、人間が住んでいる限り多少なりとも存在しているはずのものが何一つ無い、全てが無彩に沈んだ部屋だった。

────ここで毎日、何をしているのだろう・・・

夜帰宅し、翌朝ここを出るまで、毎日毎日何をしているのだろう。人形のように、ただ何処かに横たわっているだけなのではなかろうか。

────そうだ、人形だ・・・。この世界は人形のものだ

暖房は効いているはずなのに、何処か薄ら寒い虚無がこの部屋を支配し、ロイエンタールの全身をしんと冷やしてゆく。

「おまたせ」

いつの間にか戻ってきたラインハルトが、ロイエンタールの向かいのソファに腰を下ろして、缶コーヒーを一つ投げて寄越した。以前、ロイエンタールがミッターマイヤーと共にリンベルクシュトラーゼを訪れたときは、キルヒアイスが美味いコーヒーを淹れてくれたものだが、今のラインハルトにそんなことを期待するのは無駄なようだった。

「閣下・・・シュワルツェンから引っ越すときに、テレビなどは持って来られなかったのですか?」

「捨てた」

「新しいものを買わないのですか?」

「・・・いらない。そんなことより、用があって来たのではないのか?」

脚を組み、肘掛けに頬杖を付いて、真正面からロイエンタールを見据えるラインハルト姿は、先日の会議の後に二人きりで話したときと同じだった。だけど、その時は公人としての義務感だけで何とか全身に張り付かせていた覇気さえも、ここでは完全に失って、傲慢さも威圧感も何も感じなかった。

まだ半渇きの黄金の髪が、白い頬や首筋を緩やかに流れて艶っぽさを演出している。

バスローブ1枚を纏っただけの肌蹴た胸元には、銀のペンダントがある。先程バスルームに戻ったときに身に付けたのであろう。組んだ脚に視線を落とせば、バスローブの合わせ目から白い太腿が覗いている。十一分扇情的な姿であるはずなのに、ロイエンタールの情欲が刺激されることは一切なかった。

綺麗なだけが取り柄の人形だな────そう思った。

私人としてのラインハルトの色褪せ方は、公人としてのそれとは比較にならないほどで、失望や苛立ちなど通り過ぎて、今ロイエンタールの胸中にあるのは怒りと・・・、深い悲しみだった。

────人ひとり失っただけでこのザマか?

俺たちはこの人形を煌びやかに着飾らせて皆で守り立て、近い将来、玉座に座らせようというのか? ・・・冗談ではない。そんな壮大なママゴトを何の疑問も抱かずに深刻ぶって執り行うほど、俺の精神は腐っていない。茶番にも限度というものがあるはずだ。

どうすればこの人形に命を吹き込むことが出来る?いっそ殴り飛ばしてやろうか、それとも気が狂うほどに犯してやろうか。

憎しみでも屈辱でも何でもいいから、激情を迸らせてさっさと人間に戻れ────

受け取ったまま掌の上で持て余していた缶コーヒーをソファテーブルの上に置くと、ロイエンタールは立ち上がり、ラインハルトの胸倉を掴んでカーペットの上に引き倒した。倒れた拍子に小さく呻き声を上げたものの、ラインハルトは暴れもせずにロイエンタールを見上げている。

「こういうことをする為に来たのか?」

「・・・いいえ」

ロイエンタールは今、これまでに経験したことがない程に、自身の感情の置き所が解らず困惑していた。たった今、ちらりと脳裏を掠めたようなやり方では、ラインハルトを変えることは出来ない。そんなことは分かりきっている。ますます心を閉ざしてキルヒアイスとの思い出に逃げるだけだ。

それに、傷つけるのは嫌だった。

ほんの数日の間に、思いがけない形でラインハルトの弱さを知り、そして優しさも知った。英雄としてのラインハルトを、畏敬や羨望の眼差しで眺めやっていただけの頃には知ることが出来なかったものに、直接触れてしまった。以前と同じ気持ちでラインハルトと向き合うことは、もう二度とないだろう。

これから先どうするのか、今、決めなくてはいけない。

「閣下・・・、私は謝罪しに来たのです。新無憂宮の件で」

「・・・何のことだ?」

「あなたのお優しい配慮に誰も気付かず、悪気は無かったとはいえ、結果としてあなたの価値を貶めるような噂を広めてしまいました」

「・・・・・・。卿らにとっては管轄外のことだ。私は何も言わなかったし、卿らが勘違いしたところで何の問題もなかろう?その程度のことでわざわざ謝罪とは、随分優しいのだな」

「あなたへの理解が足りなかったと反省しています」

「理解? ふふっ、心配するな・・・、卿らにそこまでは期待していない」

嘲笑うかのような薄い笑みを僅かに浮かべて、ラインハルトは胸倉を掴んだままのロイエンタールの手を払い除けた。乱れた胸元を整えながら身体を起こす。立ち上がろうとしたラインハルトの腕をロイエンタールはきつく掴んで引き止めた。

「どうかもっと生者に目を向けて頂きたい」

真剣に訴えるロイエンタールとは対照的に、何が可笑しいのかラインハルトは小さく笑って言った。

「生者?生者なら誰でもいいのか?卿じゃなくても?」

「・・・」

────卿じゃなくても?

本心を見透かされた気がしてロイエンタールの冷静な血が一刹那熱くなり、ラインハルトの腕を掴む指にギリギリと力が篭った。バスローブ越しに腕に喰いこむ指を、ラインハルトは冷淡に眺めおろしたあと、ロイエンタールの金銀妖瞳をじっと見つめた。

「そうだな・・・、例えば卿なら私に何をしてくれる?」

見つめたまま顔を近づけて、お互いの息が触れ合う距離でラインハルトは更に問うた。

「愛してくれるのか?満たしてくれるのか?幸せにしてくれるのか?」

「・・・」

何と答えるべきかロイエンタールが逡巡しているあいだに、ラインハルトは腕に喰いこむ指を一本ずつ静かに解いている。解き終わった指を白い掌で柔らかく包んで、また少し笑った。

「ふふ、冗談だ。卿には無理だな」

「・・・無理かどうかは、やってみなくては分かりません」

「馬鹿馬鹿しいことを言うな。もう帰れ」

ふいと視線を逸らしてラインハルトが立ち上がると、握ったままだったロイエンタールの指が自然に離れた。その瞬間。 ロイエンタールはラインハルトの腕を再び掴んで力任せに引き寄せ、反動で転んだ痩身の上に跨って押さえつけた。

「痛・・・ッ!またかっ?いい加減にしろよ!」

ロイエンタールを睨みつけるラインハルトの表情には僅かに人間の色が戻り、蒼氷色の瞳にちらちらと怒気を揺らめかせている。睨まれているにも関わらず、ロイエンタールは思わず口元に笑みを浮かべてしまった。

────そう、人形に用はない。怒った顔のほうが余程愛おしいというものだ

「閣下、一つだけお願いがあるのです。私のこれまでの、そしてこれからの閣下への忠誠に対する報いとして、お聞き届けいただけたら幸いです」

「なんだ、急に改まって・・・」

「私と付き合っていただけませんか?」

「・・・?」

「1年間・・・今年だけで構いません」

「・・・気が狂ったのか?」

「至って正気です。閣下も休日などは退屈なさるでしょう? お暇なときに私をお構いくださるだけでよいのです」

小编ながら可笑しなことを言っている・・・自分自己を笑ってやりたい気分だったが、それでもロイエンタールは、この方法でラインハルトに近づこうと決意した。

奪ってしまおうか────そう思ったときから、きっかけを探していた。

ただ身体を奪うだけでは意味が無い。キルヒアイスに囚われたままの心を奪ってしまわなくては、ラインハルトはもう翔べない。今日ここに来て、ロイエンタールはそれを思い知った。だからこそ、この方法を選ぶ。

それなりの打算もあった。

もしも、ラインハルトの心の傷が癒えて想いを寄せてくれることがあれば、ロイエンタールはキルヒアイスに代わるナンバー2として、確実にオーベルシュタインより優位に立てるのだ。

オーベルシュタインがラインハルトに求めているのは、完全無欠の英雄だった。彼本人の理想の世界を黙って作り上げてくれる英雄。人形のように黙ってオーベルシュタインの言うことを聞くだけの英豪。ロイエンタールが最も忌避する人形のようなラインハルトを、オーベルシュタインは欲しがる。

あの男の傀儡にしてしまうぐらいなら、俺が奪って何が悪い。ロイエンタールはそう思っていた。

そして、もしラインハルトがこの先も、魂を抜かれたような人形に甘んじて翔ばたけないままでいるのなら、そのときは可哀相だが取って代わるまでだと思う。

ただ、取って代わると言っても実際には決して簡単なことではなく、ラインハルトが築いたものを最後に掠め取ったなどと世間から非難されるがごとき失態は、まず絶対に避けねばならないが・・・。でも方法ならいくらでもあるし、それを考えるのは時期尚早だった。

その場合のラインハルトの処遇も決めている。

────立場が逆転するだけだ。俺があなたの主人になる。そのときは後宮か何処かで大切に飼ってやる。だが俺はそんな結末を望んではいない。あなたには、いつまでも俺の主人でいてもらいたいものだ・・・

昨日よりも今日、ロイエンタールはラインハルトへの情を確実に深めていた。冷え切っていたはずの想いに、かすかに熱がともっている。それはロイエンタール自身が自覚していた。

后天知った新無憂宮の人員削減の件。どんな精神状態のときでも小さなことを思いやれる、こういう人こそが玉座に座るべきなのだ。だからこそ、ラインハルトには立ち直ってもらいたいと、ロイエンタールは思う。

「・・・そんな願いを私が聞き届けるとでも? 得をするのは卿だけではないのか?」

「そうかもしれませんが、引き受けてくださらないと困ります。キルヒアイスが生きていれば、奴と殴り合いでも何でもします、あなたを手に入れる為にね。・・・ですが、奴はもういない。とすれば、あなたにお聞きするしかないでしょう? どちらがいいですか・・・と」

「そんな質問なら、1年待たずとも今すぐに答えてやれるが?」

端麗な唇を僅かに歪めて冷笑するラインハルトの白い頬に、ロイエンタールは掌を押し当てた。滑らかな肌触りを楽しむかのようにゆっくりと撫で下ろして、首筋を辿ったあと、また肌蹴てしまっている胸元で掌を止める。

「それでは不公平すぎるでしょう。あなたとキルヒアイスとの11年の付き合いに及ぶべくはないとしても、最低1年は私と付き合ってください。それから判断してください。閣下だって、このままでは退屈でしょう? 色んな意味で・・・」

いやらしい笑みを浮かべながら、ロイエンタールが再び掌を動かして愛撫を開始したその一瞬、ラインハルトは右手を振りかぶってロイエンタールの頬をしたたかに打った。静寂に呑まれていた無彩の部屋に乾いた音が響く。

「ロイエンタール、随分と大胆になったのだな。一度私を汚して、弱みを握ったつもりでいるのか?」

「とんでもない。あの件は謝罪したはずですし、お許しもいただきました。蒸し返す気はありません」

それにしても手加減というものを知らない人ですね。そうぼやいてロイエンタールは苦笑いした。頬が腫れるのではないかと思うほどの強烈な平手打ちだった。

「その程度で済んだだけありがたいと思え。それから・・・、卿の願いは聞き届けよう。でも、今日はもう帰れ」

肉体を起こして立ち上がり、ソファに座りなおしたラインハルトは、ロイエンタールが置きっぱなしにしていた缶コーヒーを開けて、一気に飲み干した。そして、空になった缶を掌の上でころころと玩びながら、ロイエンタールの金銀妖瞳をじっと見つめて不敵な笑みを浮かべた。

「どうした? 付き合ってくださいと卿が言ったのだぞ。嬉しくないのか?」

このとき、ロイエンタールは少なからず困惑していた。

まさかラインハルトがこうもあっさりと承諾してくれるとは思っておらず、この先何回も食い下がる必要があると考えていた。今日はその第一歩にすぎないと思っていた。早く追い返したくて、いい加減な返事をしているだけなのか、そんな疑念まで生じたけれど、あまりしつこく念押しするのも無様だと思い、次の日曜日に会う約束だけを取り付けて、ロイエンタールは官舎を出た。

車に乗り込みエンジンをかける。

ラインハルトの真意がわからない。 本当にこんなやり方で良かったのか?そんな不安も襲ってくる。でも何かを変えるきっかけにはなったはずで、先のことを心配しても意味が無い、そうも思う。

────人の運命など、何処へどう転ぶか誰にもわからん。あの人と二人、このまま流されてみるのも悪くないのかもしれない

アクセルを踏んで少しずつ車を加速させた。ミラーに映るラインハルトの官舎が遠ざかっていき、闇にのみ込まれ完全に見えなくなって、ようやくロイエンタールは喉がからからに渇いていることに気が付いた。

さっきのコーヒー、俺が飲んでおけばよかった。そう思った。

*

本文由www.66159com发布于成人娱乐,转载请注明出处:美高梅网上赌场:私を離さないで-恋、友情に

关键词: 日记本

上一篇:死亡无法被安慰,克隆一生的绝望

下一篇:没有了